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  I live on the 8th floor... ライカM8で観た景色 by andoodesign

+ SCRAP BOOK

第二次大戦中、ニューヨーク近代美術館(MoMA)は失踪したアンリ・カルティエ=ブレッソンが戦死したものと考え、彼の追悼展を計画していました。
しかし、カルティエ=ブレッソンは1940年にドイツ軍の捕虜となって生きていたのです。
1943年に3度目の挑戦で脱走に成功し、再び姿を表したカルティエ=ブレッソンはこの話を大いに喜び、自ら展覧会を主催することを決めたそうです。
1946年、自身の全作品を見直す機会を得たカルティエ=ブレッソンはスーツケースに約300点の作品を携えてニューヨークを訪れました。
1冊のスクラップブックを買い、写真で埋めつくすと、彼はそのアルバムをMoMAのキュレーターに手渡したそうです。
こうして、彼の生還を祝う展覧会が1947年2月4日に幕を開けました。
(終戦が1945年ですので、まさに激動の時代ですね。)
SCRAP BOOK_e0135059_17124054.jpg
「SCRAP BOOK」

カルティエ=ブレッソンがこのスクラップブックに再び目を向けたのは1990年代だそうです。
そして2004年の彼の死後、このスクラップブックは作品を所有するアンリ・カルティエ=ブレッソン財団による復元を終え書籍として一般公開されたわけです。

オリジナルのスクラップブックを模したハードカバーの装丁には256ページが収められています。
全編を通して、とても興味深いのは、同じ場所、同じ立ち位置でのカットが多く掲載されている事。
縦横の構図はもとより、時間経過による状況の変化が見て取れます。
この事は、同じ背景の中で人物や出来事の配置がカルティエ=ブレッソンのイメージと一致するまで、或いは意外な物語が出来上がるまでブレッソンは同じ場所に立ち続けたことが想像出来ます。

さらに、「決定的瞬間」で超有名な作品、「サン・ラザール駅裏」(工夫が水たまりに向かって大きく足を踏み出しているアレ)は、カルティエ=ブレッソンが嫌った トリミングを施した写真であることも元画像と共に説明されています!
(元画像は画面左にフェンスの柱が写り込んでいます。)
カルティエ=ブレッソンがトリミングを施した作品はこの他にもう一点「Cardinal Pacelli」(邦題は分りません...)のみだそうです。スゴイ!!

そんなわけで、「何事も臨機応変」「興味が湧いた場所には少し時間をかけて向き合ってみよう...」などと思った今日でした。

Henri Cartier-Bresson: Scrapbook
Henri Cartier-Bresson
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by andoodesign | 2008-11-24 18:34 | 雑感